同音異字

「特」「得」「徳」

原則:
他と異なりそれ一つだけ、とりわけの意は「特」(=「special」)。「損」の対語は「得」。品性、恩恵などは「徳」。
用例:
「特に注意する」「特技」「特色」「特性」
「得をする」「得な性分」「20円の得」「お買い得」「お得な品」「得点」「得意」「会得」「損得」
「徳を積む」「徳が高い」「早起きは三文の徳」「不徳の致すところ」「徳用品」「道徳」「人徳」

「とく」の同音異字はほかに「匿」「督」「篤」がありますが、ここでは間違えやすい3つの字を取り上げました。「特」は「特に」という副詞として使用することが多いと思いますが、「得に」という変換ミスをよく見かけますので注意します。「得」と「徳」は名詞と形容動詞の形があります。「得」と「徳」は意味がかぶる部分もありますが、基本的に用例のような使い分けをします。

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「的確」「適確」「適格」

原則:
間違いないことは「的確」(=「適確」)。資格にかなうのは「適格」。
用例:
「的確な判断」「的確に伝える」「的確に処理する」
「適格審査」「適格者」「適格条件を欠く」(=「欠格」)

「的確」と「適確」はほぼ同義と考えてよいですが、「的確」で統一するのが一般的です。法律などでは「適確」を使用する場合もありますので、混在しないよう注意します。いずれも名詞と形容動詞の形があります。

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「体制」「態勢」「体勢」「大勢」

原則:
(恒久的・長期的)組織などの仕組みやシステムは「体制」。(一時的・部分的)物事に対する構えや状態は「態勢」。体の構えや姿勢は「体勢」。物事の成り行きは「大勢」。
用例:
「国家体制」「資本主義体制」「防衛体制」「反体制」「新体制」
「厳戒態勢」「出動態勢」「着陸態勢」「受け入れ態勢」
「体勢が崩れる」「体勢を立て直す」「無理な体勢」
「大勢に影響しない」「大勢に従う」「大勢を決する」

「たいせい」の同音異字はほかに、衰える「退勢」、成し遂げる「大成」、変化に適応する「耐性」などがありますが、ここでは比較的意味が似ていて間違えやすい4つの言葉を取り上げました。

「警備体制・態勢」「24時間体制・態勢」など、「体制」は恒久的・長期的、「態勢」は一時的・部分的な意味で使い分けることがあります。飛行機の「着陸態勢」は、『標準用字用例辞典』では「態勢」、『記者ハンドブック』では「体勢」と、そのとらえ方によって見解が異なります。「大勢」は「たいせい」と「おおぜい」、両方の読みがあります。

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「食料」と「食糧」

原則:
食べ物全般、穀物など主食以外を含む場合は「食料」。穀物など主食となる食べ物は「食糧」。
用例:
「食料品」「食料自給率」「携帯食料」
「食糧庁」「食糧管理制度」「戦後の食糧難」

辞典的には、米や麦などの主食となる食べ物に関しては「食糧」とすることになっていますが、各社ごとにその使い分けが微妙に異なるだけでなく、「食料問題」と「食糧問題」のように場合によって使い分けることもありますので、迷いやすい同音異字といえます。よく議事録に登場する役所言葉としては、「食糧」の使用頻度が高いように見受けます。「糧」は「かて」と読みますが、「生きていく糧」のように生きていくために必要な大事な食べ物、すなわち主食に関することかどうかで判断します。ちなみに、「しょくもつ」と読ませるときは「食物」ですが、「たべもの」と読ませるときは「食べ物」と「べ」を入れます。

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「多様」と「多用」

原則:
いろいろ、さまざまの意は「多様」。多く用いる、多忙の意は「多用」。
用例:
「多様な人種」「多様な価値観」「多種多様」「ライフスタイルの多様化」
「外来語を多用する」「御多用中のところ」

もう一つ、ほかの使い道・用事の意の「他用」という同音異字があります。意味が全く異なりますので、使い分けで迷うというより、変換ミスの多い同音異字といえます。どちらも名詞ですが、「多様」は形容動詞の形もあり、「多用」は下に「する」を付ける形があります。

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「中身」と「中味」

原則:
◎「中身」、○「中味」

『記者ハンドブック』や『標準用字用例辞典』など、大半の用字用例辞典で採用している「中身」を◎としましたが、「中味」は併記している国語辞典もあり、間違いではありませんので○としました。諸説ありますが、基本的にはどちらも同じ意味ですので、使い分けということはありません。

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「修業」と「修行」

原則:
学問・技芸などを習い身につけるのは「修業」。仏法・武道などを修め努めるのは「修行」。
用例:
「板前修業」「花嫁修業」
「修行僧」「武者修行」

「修業」は比較的その期間が決まっていることが多く、一般に広く使用されますが、「修行」は一生の努めとしてある境地にたどり着くまで諸国を巡礼するなど、古風な表現として使用されます。「修業中の身」も、一生の努めと考えれば「修行中の身」となります。板前などの職人もその意味では「修行」ととらえることができますが、花嫁の場合はできれば早々に修業から卒業したいことでしょう。

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「定形」と「定型」

原則:
一定の形やサイズは「定形」。決まった型は「定型」。
用例:
「定形郵便物」「定形封筒」
「定型詩」「定型貨物」「定型用紙」

微妙な違いなので混同しがちな同音異字ですが、「定形」はほとんど郵便物に対して使用すると思っていいでしょう。第一種郵便物の手紙のうち、規格内のものを定形郵便物、規格外のものを定形外郵便物といい、定形郵便物であれば、25gまで80円、50gまで90円で送れます。この定形郵便物扱いとなるのが定形封筒で、定形外郵便物扱いとなるのが定形外封筒というわけです。ほかに「提携」という同音異字もあります。

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「転化」と「転嫁」

原則:
他の状態に変わるのは「転化」。責任や罪を押しつけるのは「転嫁」。
用例:
「農地を宅地に転化する」「量から質への転化」「愛が憎しみに転化する」
「責任転嫁」「罪を他人に転嫁する」「消費税を価格に転嫁する」

比較的意味の違いが明確でありながら、同じ「転」の字が頭に付くため、誤用の多い同音異字といえます。「責任転嫁」は同音異字の問題としてよく出題されます。ほかに「食品添加物」の「添加」という同音異字もあります。

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「保育」と「哺育」

原則:
乳幼児を育てるのは「保育」。動物が乳を与えて育てるのは「哺育」。
用例:
「保育所」
「人工哺育」

「哺育」の「哺」は表外漢字のため、「保育」で代用してもよいことになっています。先日テレビで、飼育員に育てられている動物の赤ちゃんが一般公開されたというニュースが流れたのですが、よく見ると「人工ほ育」と表記されていました。そこで気になったので取り上げたわけですが、『標準用字用例辞典』でも注意書きとして「畜産関係は哺育」とあるように、実際には動物に関しては「保育」「ほ育」「哺育」と表記が混在しているようです。「哺乳類」「哺乳瓶」などの「哺乳」も、やはり『標準用字用例辞典』ではそのまま例外的に漢字書きとし、それ以外の用字用例辞典では「ほ乳」とするか、「授乳」等に書きかえとなっています。テレビや新聞などはさまざまな受け手に配慮する必要があるのでひらがな書きになっていますが、その必要がなく送り手にも受け手にも暗黙の了解があるようなときは漢字書きにしても差し支えないでしょう。

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