間違えやすい表記

「書き入れ時」

原則:
◎「書き入れ時」。×「掻き入れ時」。

帳簿の書き入れに忙しい意より、「年末の書き入れ時」や「ランチタイムの書き入れ時」など、主にお店などで最も利益の上がる時をいいます。『標準用字用例辞典』では「書き入れどき」と、「時」はひらがな書きになっています。商売繁盛の熊手のように、お客を掻き集めるイメージで「掻き入れ時」とする誤用が多いので、注意が必要です。

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「大目」と「多め」

原則:
主に「大目に見る」の用例で、寛大に扱うのは「大目」。やや多いくらいの分量は「多め」。
用例:
「大目に見る」
「多めに盛る」

『標準用字用例辞典』では「多目」と漢字書きになりますので、注意が必要です。「少なめ」も同様です。同訓異字といえば同訓異字ですが、変換ミスが多いので「間違えやすい表記」に入れました。

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「後ろ」

原則:
「後(うし)ろ」「後(ご、こう、のち、あと)」「後(おく)れる」
用例:
「後ろ足」「後ろ髪」「後ろ姿」「後ろ向き」「後ろ指」「後ろ前」「後ろめたい」「後ろ暗い」「後ろ盾」

「うしろ」と読ませるとき、送り仮名は「ろ」を振ります。「後」だけなら「ご」「こう」「のち」「あと」と読みます。「後れる」についてはあすの記事で取り上げます。

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「一堂に会する」

原則:
◎「一堂に会する」、×「一同に会する」

「一堂」は「同じ場所」の意で、「一同」は「そこにいる人々」の意です。「一堂に会する」は「ある場所に集まる」意ですので、「一堂」が正しい表記となります。ですので、ちょっとややこしいですが「一堂に会した一同」となるわけです。

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「愛きょうを振りまく」

原則:
◎「愛きょうを振りまく」、×「愛想を振りまく」

まず、「愛きょう」について解説します。漢字にすると「愛嬌」と「愛敬」の二つがありますが、「嬌」は表外漢字、「敬」は表外音訓のため、「きょう」はひらがな書きにします。由来を大辞泉より引用します。

「あいぎょう(愛敬)」が清音化し、キャウ・キョウの区別が失われたのち、意味に対応して「嬌」の字が近世以降に当てられるようになった。

「愛敬」は「あいけい」(=「敬愛」)の読みで「親しみ敬う」意になりますので、「にこやかでかわいらしい」や「ひょうきんで憎めない」など一般的な「あいきょう」の意で漢字書きするときは、「愛嬌」を使用することが多くなっています。

さて、「愛きょうを振りまく」ですが、平成17年度「国語に関する世論調査」では、「愛きょうを振りまく」を使う人が43.9%、間違った言い方の「愛想を振りまく」を使う人が48.3%という逆転した結果となりました。間違えやすい慣用句の一つです。

平成17年度「国語に関する世論調査」結果(文化庁)

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「道理で」

原則:
◎「道理で」「どうりで」、×「どおりで」
用例:
「道理で遅いと思った」

ひらがなで「どうりで」と書くほうが多いかもしれませんが、用字用語辞典では「道理で」と漢字書きになっています。「どおりで」という誤表記が多いので、ひらがな書きにするときは間違えないようにします。

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「片づく」

原則:
◎「片づく」「片付く」、×「片ずく」

漢字にしたときの「付く」より、「片づく」が正表記で「片ずく」は誤表記です。『標準用字用例辞典』『NHK新用字用語辞典』では「片づく」、『記者ハンドブック』等の新聞・出版系では「片付く」が採用されています。

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「気づく」

原則:
◎「気づく」「気付く」、×「気ずく」

漢字にしたときの「付く」より、「気づく」が正表記で「気ずく」は誤表記です。『標準用字用例辞典』『NHK新用字用語辞典』では「気づく」、『記者ハンドブック』等の新聞・出版系では「気付く」が採用されています。

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「心地よい」

原則:
◎「心地よい」、△「心地好い」、×「心地良い」

漢字で書くと「心地好い」が正しい表記ですが、「好い」が表外音訓のため「心地よい」とひらがな書きにします。

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「役不足」

原則:
力量に対して役目が軽すぎるときに用いる。
用例:
「アカデミー主演女優賞を受賞した私にその端役は役不足だ」「実績のある君が雑用係とは役不足だ」

文化庁発表の平成18年度「国語に関する世論調査」では、「彼には役不足の仕事だ」を、本来の意味である「本人の力量に対して役目が軽すぎること」で使う人が40.3%、間違った意味の「本人の力量に対して役目が重すぎること」で使う人が50.3%と、逆転した結果が出ています。平成14年度には、正しい人が27.6%、間違っている人が62.8%でしたので、この話題がきっかけとなって本来の意味を知る人が増えているのは喜ばしいことです。とはいえ、まだまだ誤用も多いので、整文や校正の際はどう直すか悩みます。

「役不足」の対義語として「力不足」がよく挙げられますが、「私にその大役は役不足ですが頑張りたいと思います」を「私にその大役は力不足ですが頑張りたいと思います」とそのまま置きかえにいので、「私には過分の大役ですが頑張りたいと思います」「僭越ながら大役を仰せつかりましたが頑張りたいと思います」「大役を拝命しましたが微力ながら頑張りたいと思います」など、時と場合に応じて適切なへりくだった表現を選択します。

平成18年度「国語に関する世論調査」結果(文化庁)

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