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2009年4月

「後」「跡」「あと」

原則:
先、前の対義語は「後」。何かが残したしるしは「跡」。残りの意で副詞的に用いるときは「あと」とひらがな書き。
用例:
「後を受ける」「後を頼む」「後を引く」「後がない」「後から行く」「後で話す」「会議の後」「後の祭り」「後を絶たない」「犯行の後」「容疑者の後を追う」「後をつける」
「食べ残しの跡」「跡を継ぐ」「苦心の跡」「跡形もない」「立つ鳥跡を濁さず」「跡を絶つ」「犯行の跡」「容疑者の跡を追う」「跡をつける」
「あと5分かかる」「あと1問で終わり」「あと2人必要」

ほかに、「傷痕」の「痕」、「城址」の「址」といった同訓異字がありますが、いずれも表外漢字のため「跡」を使用します。ただし、「じょうし」と読む「城址」は一般に許容されています。

「後」と「跡」には原則のような意味の違いはありますが、もともと同語源のため混同しやすい場合もあります。各用例の最後に4つ、一見同じようですが使い分ける用例を並べてみました。

「後を絶たない」と「跡を絶つ」ですが、「後を絶つ」「跡を絶たない」のように逆はありません。前者は「絶え間なく続く」「ひっきりなし」の意ですが、後者は「ぷっつりと途絶える」「消息を絶つ」という違いがあります。「後を絶たない」は人気ラーメン店の行列に並んでいる人を、「跡を絶つ」は遭難者の足跡がそこで消えてしまった様子をイメージしていただければと思います。

「犯行の後」は時間、「犯行の跡」は証拠です。「容疑者の後を追う」は追跡、「容疑者の跡を追う」は捜査です。「後をつける」は尾行、「跡をつける」は痕跡を残すことです。サスペンスドラマを思い浮かべてみるといいかもしれません。

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「ビュッフェ」

原則:
原語「buffet」より。◎「ビュッフェ」、○「ブッフェ」、△「ビュフェ」「ブフェ」

現在の日本ではバイキングと同様、食べ放題の代名詞とされていますが、本来はフランス語で立食形式の食事をビュッフェといい、食堂車を指すこともあります。セルフサービスでテーブルに並んだ料理が食べ放題であることから、バイキングと同様のものとして定着していますが、チョイスした料理を座って食べるのであれば、厳密な意味でのビュッフェとは異なります。ちなみに、バイキングは帝国ホテルのレストランが命名し、1958年から供されるようになったものです。最も一般的な表記は「ビュッフェ」ですが、ほかにも上記のような表記がありますので、固有名詞の場合はそれに従います。

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「会う」「逢う」「合う」「遭う」

原則:
人は「会う」「逢う」。人以外は「合う」。好ましくないことは「遭う」。
用例:
「人に会う」「客に会う」「投票に立ち会う」「出会い頭」
「逢ってすぐ一目惚れした」「出逢いのきっかけ」「逢い引き(逢引き、逢引)」
「気が合う」「好みが合う」「助け合う」「計算が合う」
「事故に遭う」「災難に遭う」「盗難に遭う」「反対に遭う」

もう一つ、偶然出くわす意の「遇う」という同訓異字がありますが、表外音訓であり使用する機会も少ないため、ここでは省いています。また、「逢」は表外漢字のため、人に対しては主に「会う」を使用しますが、特に男女については雰囲気の出る「逢」を当てることがよくありますので、用例を挙げておきました。ですので、「であう」を対象で使い分けると、一般に人は「出会う」、男女は「出逢う」、お気に入りの物などには「出合う」となります。

「逢い引き(逢引き、逢引)」は、江戸後期から使われ始めたという、現代では少し古風な言葉ですが、『標準用字用例辞典』では「あいびき」となっています。ひらがな書きにすると何か熱が冷めてしまったようで雰囲気が出ませんね。ちなみに、豚肉と牛肉を混ぜ合わせたひき肉も「あいびき」といいますが、漢字書きにすると「合い挽き(合挽き、合挽)」になります。「挽く」は表外音訓ですが、「合いびき」や「あいびき」にすると商品がイメージしにくくなってしまいます。このように、表記には原則が必要ではありますが、それに縛られすぎることなく、漢字が与える印象をうまく利用することも、ときには必要と考えます。

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「一堂に会する」

原則:
◎「一堂に会する」、×「一同に会する」

「一堂」は「同じ場所」の意で、「一同」は「そこにいる人々」の意です。「一堂に会する」は「ある場所に集まる」意ですので、「一堂」が正しい表記となります。ですので、ちょっとややこしいですが「一堂に会した一同」となるわけです。

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「愛きょうを振りまく」

原則:
◎「愛きょうを振りまく」、×「愛想を振りまく」

まず、「愛きょう」について解説します。漢字にすると「愛嬌」と「愛敬」の二つがありますが、「嬌」は表外漢字、「敬」は表外音訓のため、「きょう」はひらがな書きにします。由来を大辞泉より引用します。

「あいぎょう(愛敬)」が清音化し、キャウ・キョウの区別が失われたのち、意味に対応して「嬌」の字が近世以降に当てられるようになった。

「愛敬」は「あいけい」(=「敬愛」)の読みで「親しみ敬う」意になりますので、「にこやかでかわいらしい」や「ひょうきんで憎めない」など一般的な「あいきょう」の意で漢字書きするときは、「愛嬌」を使用することが多くなっています。

さて、「愛きょうを振りまく」ですが、平成17年度「国語に関する世論調査」では、「愛きょうを振りまく」を使う人が43.9%、間違った言い方の「愛想を振りまく」を使う人が48.3%という逆転した結果となりました。間違えやすい慣用句の一つです。

平成17年度「国語に関する世論調査」結果(文化庁)

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紛らわしい地名(東京・神奈川)

変換すると小さい「ヶ」も出てきますが、駅名などは大きい「ケ」を使用します。

【東京】

青戸(地名)/青砥(駅名)
阿佐谷(地名)/阿佐ケ谷(駅名)
市谷(地名)/市ケ谷(駅名)
井ノ頭(通り)/井の頭(公園)
霞が関(地名)/霞ケ関(駅名)
自由が丘(地名)/自由ケ丘(駅名)
墨田(区・地名)/隅田(川・公園)
雑司が谷(地名・地下鉄駅名)/雑司ケ谷(霊園・都電駅名)
多摩(市・郡・区・川・センター・動物公園・駅名)/多磨(霊園・府中市町名・西武線駅名)
虎ノ門(ホール・地名・駅名)/虎の門(病院)
一ツ橋(地名)/一橋(大学)
丸の内(ビルディング・地名)/丸ノ内(駅名)
山の手(⇔下町)/山手(線「やまのてせん」) ※「山手」は横浜の地名・駅名で「やまて」
四谷(地名)/四ツ谷(駅名)

「の」と「ノ」、「が」と「ケ」、「ケ」と「ツ」のあるなしが多く見られます。

【神奈川】

江の島(地名)/江ノ島(駅名)
七里ケ浜(地名・駅名)/七里ガ浜(住所表示)
溝口(地名)/溝ノ口(南武線駅名)/溝の口(東急線駅名)
由比ケ浜(地名・駅名)/由比ガ浜(住所表示)

鎌倉では住所表示に「ガ」を使用する例が多く見られます。

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特定商品名の言いかえ例

特定商品名とは、「特許庁に登録されている名称で、商標権者によって独占的に使用されるもの」をいいます(『記者ハンドブック』より)。ここでは一般名称と誤認されやすい主な特定商品名を取り上げます。

特定商品名が使用できないときは、矢印右側の一般名称に言いかえます。一般名称は言いかえ例です。特定商品名だったが一般名称化した語や、商標権の放棄・消滅・公開などの理由により使用できる語は《使用可》としましたが、見解が分かれる場合は《使用可の見解あり》としました。

アイスノン ⇒ 冷却枕
味の素 ⇒ うま味調味料、化学調味料
アロンアルファ ⇒ 瞬間接着剤
ウィンドサーフィン《使用可》
ウォークマン ⇒ ヘッドホンステレオ
ウォシュレット ⇒ 温水洗浄便座
写ルンです ⇒ レンズ付きフィルム
エスカレーター《使用可》
えびせん ⇒ えびせんべい
エレクトーン ⇒ 電子オルガン
オセロゲーム ⇒ リバーシゲーム《使用可の見解あり》
カップヌードル ⇒ カップめん
カルピス ⇒ 乳酸菌飲料
クレパス ⇒ パステルクレヨン
キャタピラー ⇒ 無限軌道、クローラー
キャッチホン ⇒ 割込通話サービス
サランラップ ⇒ ラップ
ジェットスキー ⇒ 水上バイク
ジッパー ⇒ ファスナー
シーチキン ⇒ ツナ缶
ジープ ⇒ 小型四輪駆動車
シッカロール ⇒ ベビーパウダー、天花粉
写メール ⇒ 携帯電話の写真付きメール
信州味噌 ⇒ 信州のみそ
正露丸 ⇒ 整腸剤《使用可の見解あり》
セスナ ⇒ 軽飛行機
セメダイン ⇒ 接着剤
ゼロックス ⇒ 複写機
セロテープ ⇒ セロハンテープ
宅急便 ⇒ 宅配便
タッパーウェア ⇒ 食品保存容器
タバスコ ⇒ ペッパーソース
デジカメ ⇒ デジタルカメラ
テトラパック ⇒ 三角パック
テトラポッド ⇒ 消波ブロック、波消しブロック
テフロン ⇒ フッ素樹脂加工
トランポリン《使用可》
ナップザック ⇒ 小型リュック
パラゾール ⇒ 防虫剤
パンタロン《使用可》
バンドエイド ⇒ ばんそうこう(絆創膏)
ピアニカ ⇒ 鍵盤ハーモニカ
ファミコン ⇒ テレビゲーム機
プラモデル《使用可》
プリクラ ⇒ プリントシール機、写真シール機
フリスビー ⇒ フライングディスク、円盤遊具
フリーダイヤル ⇒ フリーコール
ペアガラス ⇒ 複層ガラス
ホカロン ⇒ 使い捨てカイロ
ポストイット ⇒ ふせん
ホバークラフト《使用可》
ホッチキス《使用可》
ポラロイドカメラ ⇒ インスタントカメラ
ポリバケツ ⇒ プラスチックのバケツ
ボンド ⇒ 接着剤《使用可の見解あり》
マジック(インキ、ペン) ⇒ フェルトペン
万歩計 ⇒ 歩数計
UFOキャッチャー ⇒ クレーンゲーム機
ラジコン ⇒ 無線操縦、ラジオコントロール《使用可の見解あり》
ルービックキューブ《使用可》
ループタイ ⇒ つけネクタイ(ひも状ネクタイは「ひもタイ」「ロープタイ」)
レーザーディスク《使用可》
レゴ ⇒ 組み立て玩具
ワンカップ ⇒ カップ酒

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間違えやすい会社名

味の素ゼネラルフー
いす自動車
ノン
ーピー
三和シッター工業
チハタ
東洋シッター
ニッカウスキー
日本コロビア
日本トイザ
富士フルム
ブリストン
ブルドッソース
文化シッター
三菱レヨン

「イトーヨーカドー」は店名で、登記上の会社名は「株式会社イトーヨーカ堂」です。会社名として記す必要がない限り、一般に「イトーヨーカドー」とします。

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「空く」と「開く」

原則:
そこにあったものがなくなる、空(から)、「empty」の意は「空(あ)く」。開(ひら)く、「open」の意は「開(あ)く」。
用例:
「席が空く」「空いた皿」「空き地」「空き缶」「空き巣」「がら空き」「家を空ける」「時間を空ける」
「窓が開く」「幕が開く」「鍵が開かない」「店が開く」「開いた口がふさがらない」「開かずの間」

意味に明確な違いがありますので、使い分けで迷うというよりは選択ミスで誤変換しやすい同訓異字です。といいつつ、「穴があく」のはどちらか迷います。『標準用字用例辞典』では「空く」(表記は「あく」)ですが、『記者ハンドブック』では、具体的に物体に穴があくのは「開く」、「舞台に穴があく」など抽象的な表現の場合はひらがな書きとしています。そこにあったものがなくなって穴があくと考えれば「空く」になりますが、検索サイトではどちらでもヒットするよう、紙、ピアス、パイプなどの「穴あけ」はひらがな書きが一般的です。

「空く」は「あく」のほかに「すく」とも読みますが、「空(す)く」は表外音訓です。「開く」は「あく」とも「ひらく」とも読みますが、どちらも表外音訓ではありません。いずれも同じ送りで二通りの読みがあるため、『標準用字用例辞典』では「開(ひら)く」以外はひらがな書きになっています。

もう一つ、「明く」という同訓異字があります。「明ける」「明け」の形で使用するのが一般的ですが、「らち(埒)が明かない」という慣用句は覚えておきたいところです。

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「良く」と「よく」

原則:
十分、たびたび、非常になどの意の副詞はひらがな書きで「よく」。
用例:
「歯をよく磨く」「よく勉強する」「よくわかる」「よく似ている」「よく書けた」「よく来てくれた」「よく来られたものだ」「よく行く店」「よく物忘れをする」

「翌」「欲」「浴」「翼」などの同音異字もありますが、ここでは形容詞の「よい」から転じた副詞の「よく」を取り上げます。

「よい」または「よく」と読む漢字は「良」「善」「好」「能」の4つがあり、うち「好」と「能」は表外音訓です。『標準用字用例辞典』ではすべてひらがな書きになりますが、それ以外は基本的に、形容詞は漢字書き、副詞はひらがな書きで区別します。優良の意は「良」、善良の意は「善」ですが、一般には「良」を使用する頻度が多く、「善」は「善い行い」など使用が限定的です。英語ではどちらも「good」で使い分けが難しいので、迷ったらひらがな書きにします。

形容詞は漢字書きとしましたが、「やってもよい」「それでよい」「もうよい」などの終止形・連体形は「いい」とする場合が多いため、ひらがな書きにします。何でも「良い」「良く」と漢字書きにしている場合を“よく”見受けますが、適切に使い分けたい語の一つです。

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「言う」と「いう」

原則:
「say」の意で、言葉にして述べるときは漢字書きで「言う」。「言う」の実質的な意味が薄いときはひらがな書きで「いう」。
用例:
「言いたいことを言う」「彼が言うには」「新聞でそう言っている」「はっきり言って」「簡潔に言えば」「逆に言うと」「言わざるを得ない」「言うまでもない」「そう言わんばかり」「だれが何と言っても」
「一般にコミックという」「彼が始めたのが発端という」「こういうことに決定した」「そういう例がある」「どちらかというと」「その意味からいって」「その点からいえば」「なぜかといえば」「そういえば」「とはいえ」「あっという間」「何というか」「何といっても」

用例を見ると、主に「~という」の形で、言った人や言ったことがはっきりしなかったり、慣用的な言い回しはひらがな書きであるのがおわかりいただけると思います。最後の用例を見ると、「だれが何と言っても」は漢字書き、「何といっても」はひらがな書きになっていますが、「何といっても」は「なんたって」や「どう考えても」のように他と比べて強調する慣用的な言い回しですので、このように使い分けます。

迷う例は用例から外しました。「彼女は女傑といわれている」「成功したといえる」のように、「~といわれ(てい)る」「~といえる」は、『標準用字用例辞典』では漢字書き、『記者ハンドブック』ではひらがな書きになっています。言っている人を限定的にとらえるか、一般的にとらえるかの解釈の違いと思われますが、このように迷う場合はひらがな書きにします。

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「触感」と「食感」

原則:
手ざわりや肌ざわりは「触感」。舌ざわりや歯ごたえは「食感」。
用例:
「ごわごわした触感」「柔らかな触感」
「もちもちした食感」「とろけるような食感」

「食感」は比較的新しく辞典に加わった語ですので、ネット辞典等で検索しても出てこないことがありますが、食べ物を口に入れたときの表現として多く使われています。ヤマザキの食パン「新食感宣言」や、ユニチャームの野菜を保存する「シャキッと食感シート」など、商品名にもなっています。

食感がいい - 気になることば

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「スムーズ」

原則:
◎「スムーズ」、△「スムース」

原語「smooth」より。発音が「with」や「mother」と同様の「ズ」に近いことから、滑らかの意は「スムーズ」と表記しますが、「スムース」でも許容される場合があるので「△」としました。例えば、毛足の短い犬は「スムースヘアード」、単に「スムース」ともいうほか、音楽のジャンルでフュージョンの一種とされる「スムースジャズ」などがあります。

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表記に関するポイント

表記は、どれが正しくてどれが間違いと一概に言い切れない場合が多くありますが、次の3つのポイントに気をつけることで、読んでもらいやすい文章になりますので、参考にしてみてください。

1.明らかな間違いを避ける
2.文書内で表記を統一する
3.常用漢字を基本に読みづらい漢字を避け、バランスのとれた漢字かなまじり文にする

1.明らかな間違いを避ける

1)誤変換による入力ミス(例:「初め」と「始め」、「以外」と「意外」など)
2)思い込みによる間違い(例:「役不足」や「的を射る」など)

誤変換による入力ミスは、上記例のような同訓異字・同音異字のほか、「と区別の(特別の)」「佐賀市に行く(探しに行く)」などの類もありますので、入力し終えた後は読み直すことが重要です。また、正しいと思い込んでいた表記や使用法が実は間違っていたということもありますので、普段あまり使用しない語やあいまいな語は辞典で一度確認する習慣をつけると、後で恥をかかずにすみます。

2.文書内で表記を統一する

「エンターテインメント」と「エンタテインメント」の混在や、「配布」と「配付」の混在など、同じ文書の中で表記の揺らぎがないようにします。表記を統一するのは、書き手が複数の場合のばらつきを防ぐためであるのはもちろんですが、読み手を混乱させないためでもあります。誤表記のない統一感のある文章は、読み手が内容を理解する作業に集中する手助けとなります。

3.常用漢字を基本に読みづらい漢字を避け、バランスのとれた漢字かなまじり文にする

迷ったらひらがな書きにするような使い分けの難しい同訓異字・同音異字もありますが、読みやすさを考慮して漢字とひらがなのバランスがとれた文章を心がけます。

◇漢字が多い例(漢字が多いと難解な印象を与えます)
「何処に有るか尋ねると暫くして台風の為入荷が未定との事だったので、今夜か明朝には連絡して貰う様手筈を整えて帰宅した」

「どこにあるか尋ねるとしばらくして台風のため入荷が未定とのことだったので、今夜か明朝には連絡してもらうよう手はずを整えて帰宅した」

◇ひらがなが多い例(ひらがなが多いと稚拙な印象を与えるだけでなく、誤解を生むこともあります)
「つかってみたらよかったのでまたかいたかったのだが、セールが終わっていてたかかったのでやめた」

「使ってみたら良かったのでまた買いたかったのだが、セールが終わっていて高かったのでやめた」

小説などの創作文章は、表記も含めて著者の自由な表現を尊重すべきですが、ビジネス文書やマニュアル、論文、レポートなどの類は、読み手の注意が表記に向くことのないよう、ごく自然に読み進められ、内容を理解しやすい文章にすることが求められます。

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「通り」と「とおり/どおり」

原則:
「~どおり」「~のとおり」と下に付く形で、「~」と同じ状態かそのくらいの程度を表すときはひらがな書き。それ以外の「street」「through」などの意は漢字書き。
用例:
「九分どおり」「予想どおり」「そのとおり」「ご存じのとおり」「次のとおり」
「大通り」「通り道」「にぎやかな通り」「銀座通り」「通り魔」「通りすがり」「風の通り」「声の通り」「通り一遍」「一通り」

どちらも漢字書きにして使い分けされていないことの多い語ですが、公用文の基準となる「文部省用字用語例」にも使い分けの記載があります。「一通り」は「ひととおり」の読みで「一通り目を通す」など、始めから終わりまでざっと、全体的にという意のほか、「一通り」「二通り」「三通り」などと組み合わせや種類を数える意があります。

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「道理で」

原則:
◎「道理で」「どうりで」、×「どおりで」
用例:
「道理で遅いと思った」

ひらがなで「どうりで」と書くほうが多いかもしれませんが、用字用語辞典では「道理で」と漢字書きになっています。「どおりで」という誤表記が多いので、ひらがな書きにするときは間違えないようにします。

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「玉」「球」「弾」「霊」

原則:
競技用のボールや電球は「球」。鉄砲などの弾丸は「弾」。魂は「霊」。それ以外は「玉」。
用例:
「球拾い」「球の行方」「ピンポン球」
「ピストルの弾」「弾を込める」「流れ弾」
「御霊」「言霊」「霊送り」「霊迎え」
「目玉」「くす玉」「シャボン玉」「毛糸の玉」「そろばん玉」「パチンコ玉」「玉突き事故」「替え玉」「玉のこし」「玉の肌」「玉の汗」「肝っ玉」「玉にきず」「善玉悪玉」「鉄砲玉」

「玉」と同義の「珠(たま)」は表外音訓のため「玉」を使用します。「霊」と同義の「魂(たま)」も表外音訓で、こちらは「たましい」の読みで使用します。「御霊」は「みたま」と読みますが、「御(み)」が表外音訓のため、『標準用字用例辞典』では「みたま」、その他用字用語辞典では「み霊」と表記します。「球」「弾」「霊」は限定的に、それ以外は一般に「玉」を使用します。実物の鉄砲に込めるのは「弾」ですが、行ったきり帰ってこない意の「鉄砲玉」は「弾」ではありません。このように「玉」は比喩的な表現が多いのが特徴です。また、同じ「たま」の読みで、「まれに」の意の「たまに」は、漢字にすると「偶に」となりますが、表外音訓のためひらがな書きにします。

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「ボール」と「ボウル」

原則:
球の「ball」は「ボール」。主に調理に用いる鉢や椀の「bowl」は「ボウル」。

球のほか、野球でストライクゾーンから外れた投球も「ボール」です。「ボウル」の用例には「サラダボウル」や「カフェオレボウル」のほか、食事中に卓上で指先を洗う「フィンガーボウル」などがあります。また、すり鉢状のスタジアム、競技場、劇場なども「ボウル」といい、ロサンゼルスの「ローズボウル」などがありますが、その競技場の名前を取って、アメリカンフットボールのチャンピオンシップは「ローズボウル」「スーパーボウル」、国内では「ライスボウル」「甲子園ボウル」のように呼ばれています。

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「遊技」と「遊戯」

原則:
許可営業の娯楽は「遊技」。一般の遊びは「遊戯」。
用例:
「県の遊技業協同組合」「パチンコの遊技台」「繁華街の遊技場」
「幼稚園のお遊戯会」「公園の遊戯施設」「ブルース・リーの主演映画『死亡遊戯』」「恋愛遊戯」

「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風営法)の対象となる許可が必要な遊技場には、マージャン店、パチンコ店、ゲームセンター等があります。一方、「遊戯」は一般的な遊びに対して使用し、遊園地、テーマパーク、アミューズメントパークなどの大型施設から、ボウリング場、ビリヤード場、卓球場などの屋内施設、公園のブランコや滑り台、フィールドアスレチック(商標名)などがあります。ちなみに、『死亡遊戯』の原題は『THE GAME OF DEATH』ですが、直訳なんですね。「恋愛遊戯」は太田裕美の曲名にもなっています。

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「使」と「遣」

原則:
人や物など主に「~をつかう」は「使」。気・心・金・筆・言葉など主に「~づかい」は「遣」。
用例:
「人を使う」「機械を使う」「仮病を使う」「居留守を使う」「声色を使う」「人使い」「召し使い」「小間使い」「魔法使い」「人形使い」「子供の使い」「使い勝手」「使い込み」「使い捨て」「使い走り」「使い古し」「使い分け」「気を使う」「神経を使う」
「気遣い」「気遣う」「心遣い」「金遣い」「小遣い」「無駄遣い」「筆遣い」「言葉遣い」「仮名遣い」「両刀遣い」

一般に人や物など多くの場合「使」を使用しますが、気・心・金・筆・言葉など「気遣う」以外は「~づかい」と名詞の形で限定的に「遣」を使用します。「気遣う」も「気を使う」も同じ動詞で同じ意味ですが、後者は「~をつかう」の原則に従い、多くの辞典が「使」としています。

『標準用字用例辞典』における違いを挙げます。「召し使い」「小間使い」は「召使」「小間使」と送りません。「魔法使い」「人形使い」は「魔法遣い」「人形遣い」で、動詞は「魔法を使う」「人形を使う」と原則のとおりです。また、『記者ハンドブック』に解説がありますが、人形浄瑠璃は特別に「人形遣い」「人形を遣う」となります。

多くの辞典で「筆づかい」は「遣」の一方で、絵の具などの「色づかい」は「使」となっています。理由は定かでありませんが、このように紛らわしいものや迷ったときはひらがな書きにします。

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「アタッシェケース」

原則:
◎「アタッシェケース」、△「アタッシュケース」

原語「attache case」より(フランス語で、「attache」の e はアクサン・テギュ - 綴り字記号)。「アタッシェケース」が正表記ですが、「アタッシュケース」のほうが普及したため、許容する辞典も多くあります。gooの「間違いやすいカタカナ語ランキング」堂々の1位に輝きました。

間違いやすいカタカナ語ランキング - goo

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