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「越える」と「超える」

原則:
峠・山・壁・境界などを通り過ぎて向こう側へ渡る、時が過ぎる、追い抜くのは「越える・越す」。ある数量・基準・範囲などが上回るのは「超える・超す」。
用例:
「野を越え、山を越え」「国境を越える」「フェンスを乗り越える」「障害を乗り越える」「越えがたい壁」「六十の坂を越える」「返済期日を繰り越す」「冬を越す」「先を越す」「先輩を飛び越えて昇進する」「度を越した冗談」「権限を越える」
「5万人を超える観衆」「時速200キロを超える」「60歳を超える人に支給」「危険水域を超える」「体力の限界を超える」「予想を超える被害」「世界記録を超える」「前年度を超える実績」「党派を超えて手を結ぶ」

基本的に、「乗り越える」「飛び越える」「繰り越す」「貸し越す」「勝ち越す」「持ち越す」など他の動詞と複合的に使用したり、「繰り越し」「貸し越し」「勝ち越し」「持ち越し」などの名詞に変化したり、「フェンス越し」「3年越し」など名詞の下に付くような場合は、「越える・越す」を使用します。一方、「超える・超す」は、数量・基準・範囲などのある一点を突破することに主眼があります。その上で、原則・用例に従えば大方使い分けられると思いますが、あいまいで難しい場合もあるやっかいな同訓異字です。

「越える・越す」用例の「野を越え、山を越え」「国境を越える」「フェンスを乗り越える」は、原則の「峠・山・壁・境界などを通り過ぎて向こう側へ渡る」例です。次の3例は、「幾多の障害を乗り越えて結婚した」「目に見えない越えがたい壁が立ちはだかっている」「私もようやく六十の坂を越えた」など、比喩的に使用する例です。ここで注目したいのは、「超える・超す」の用例に「60歳を超える人に支給」という例がありますが、同じ年齢のことでも数量として表す場合には「超える・超す」になります。「返済期日を繰り越す」「冬を越す」は、原則の「時が過ぎる」例です。「先を越す」「先輩を飛び越えて昇進する」は、原則の「追い抜く」例です。「度を越した冗談」の「度を越す」は「度が過ぎる」の意ですが、数量・基準・範囲などのある一点というよりも相対的な程度による例です。一方、「超える・超す」用例の「前年度を超える実績」までは、原則の「数量・基準・範囲などが上回る」例です。

各用例の最後、「権限を越える」は「越権」、「党派を超えて手を結ぶ」は「超党派」という熟語がありますので上記のように使い分けますが、実際には後者の主義や立場といった意の使い分けがあいまいになりがちです。例えば、「先生と生徒をこえたつき合い」「利害をこえて一致する」などで、先生と生徒、利害関係にある一方と一方の間にある見えない壁を比喩的に取り払うと考えれば「越える・越す」となりますが、『標準用字用例辞典』や『記者ハンドブック』などの用字用語辞典では、主義や立場は「超える・超す」で、「超党派」の考え方が柱となっています。

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