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2009年2月

「効く」と「利く」

原則:
期待どおり良い効果や働きが現れるのは「効く」。機能や能力が十分発揮されるのは「利く」。
用例:
「薬が効く」「肥料が効く」「宣伝が効く」
「気が利く」「口を利く」「鼻が利く」「応用が利く」「割引が利く」「わさびが利く」「保存が利く」「無理が利く」「利いたふうなことを言う」「利き酒」

「効く」は、薬・肥料・宣伝などに対して「利く」よりも限定的に使用します。漢字書きでなくても誤解が生じにくいので、迷ったらひらがな書きにします。『標準用字用例辞典』では、「利く」はひらがな書きになりますので、注意が必要です。間違えやすいところで、「利いたふうなことを言う」や「利き酒」は「聞」ではありませんが、「聞き耳を立てる」は「利」ではありません。

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「風」と「ふう」

原則:
名詞の下に付いてそれに類する、趣があるなどの意を表すときは漢字書き。「~というふうに」のように前の語を受けて複合的に用いるときはひらがな書き。
用例:
「昔風のやり方」「洋風にアレンジする」
「やったというふうに聞いている」「そんなふうな見方」

文化庁編集「公用文の書き表し方の基準」で「風」と「ふう」の使い分けが記載されているため、用字用例辞典でも原則のように使い分けていますが、「知らないふうを装う」などの場合、『標準用字用例辞典』だけが漢字書きとなっています。同様に「利いたふうなことを言う」は、『標準用字用例辞典』では「きいた風」となります。ここで注意したいのは、「聞」ではなく「利」である点ですが、これは「効く」と「利く」の項で改めてふれたいと思います。

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「寂しい」

原則:
◎「寂しい」、△「淋しい」

「寂しい」「淋しい」どちらも同義ですが、「淋」は表外漢字のため一般に使用しません。読みは「さびしい」「さみしい」の両方ありますが、「さびしい」が標準の読みとなっています。

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「配布」と「配付」

原則:
多くの人に広く行き渡るように配るのが「配布」。一人一人に配り手渡すのが「配付」。
用例:
「チラシを配布する」「ビラを配布する」「各家庭に選挙公報を配布する」
「会議の資料を配付する」「試験問題を配付する」「証明書を配付する」

「配布」の「布」には、布教・布告・布施・布令・公布・宣布・発布・頒布・分布・流布など、広く行き渡らせるという意があります。「配付」の「付」には、付与・下付・還付・給付・交付・納付・配付・返付など、物を手渡したり与えたりする意があります。配り方や配る対象によって、適切に使い分けたいものです。

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「パーティション」「パーテーション」

原則:
◎「パーティション」「パーテーション」、×「パーティーション」

一般に、間仕切りの意では「パーテーション」、コンピューターのハードディスクの記憶領域における区分の意では「パーティション」という表記が主に使用されています。「内閣告示・内閣訓令 - 外来語の表記」にないためか、用字用語辞典には両方とも記載がありません。国語辞典では、新明解国語辞典は両方なく、大辞林やデイリーコンサイス国語辞典は「パーティション」のみ、大辞泉は両方ありますが、「パーテーション」は「⇒パーティション」と記載されています。原語「partition」を踏まえて総合的に判断すると「パーティション」が正表記になりますが、「パーテーション」もすでに浸透している現状では、用途や方針により定めた表記で統一するという対処をします。

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「ひざまずく」

原則:
◎「ひざまずく」、△「跪く」、×「ひざまづく」
用例:
「ひざまずいて用件を聞く」

「跪」は表外漢字のためひらがな書きにします。「ひざをつく」に似ているためか、「ひざまづく」という表記を見かけますが、「ひざまずく」が本則の読みです。ちなみに、「ひざをつく」の「つく」は漢字にすると「突く」で、「付く」や「着く」ではありません。「ひざをつく」とひらがな書きにしたほうがよいでしょう。

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「師」と「士」

原則:
実際の名称に従う。
用例:
以下に実例を示す。
◇資格の必要な職業としての「師」
医師、看護師、保健師、助産師、薬剤師、はり師、きゅう師、指圧師、美容師、理容師、調理師など
◇一般的な職業としての「師」
教師、講師、漁師、猟師、庭師、絵師、仏師、表具師、人形師、講談師、奇術師、軽業師、漫才師など
◇あまりいい意味ではない「師」
詐欺師、イカサマ師、ペテン師、ゴト師、寝業師など
◇資格の必要な職業としての「士」
弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、公認会計士、税理士、弁理士、建築士、保育士、栄養士、管理栄養士、歯科衛生士、介護福祉士、社会福祉士、気象予報士、救急救命士、測量士など
◇一般的な職業としての「士」
運転士、機関士、整備士、通訳士、代議士、力士、棋士、闘牛士など
◇その他さまざまな「士」
学士、修士、博士、紳士、国士、名士、志士、策士、兵士、戦士、剣士、騎士、文士、弁士など

「師」は、技術・技芸などの語に付いてその専門家であることや、それを教授する先生や師匠であることを表します。「士」は、本来男性・男子の意で、特に学問・道徳・資格・技術を身につけた人物であることを表します。漢字の意味だけ見れば、先生は「師」、男性は「士」となりますが、実例を見ればそうとも限らないことは一目瞭然です。強いて言えば、講談師、奇術師といった技芸のある人や、あまりいい意味ではない詐欺師やイカサマ師などは「師」のほうで、どちらが偉いといったことはありません。「士」を生業とする女性はたくさんいますし、医師も弁護士も「先生」と呼ばれる意味では、「師」と「士」の違いを明確にすることは難しいので、実際の名称に従うことを原則としています。よく調べた上で混同しないように気をつけたいものです。

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「作る」と「造る」

原則:
建造物・庭園・船・酒などは「造る」。それ以外は「作る」。
用例:
「庁舎を造る」「庭園を造る」「軍艦を造る」「数寄屋造り」「石造り」「酒造り」「お造り」
「書類を作る」「小説を作る」「機会を作る」「米作り」「子作り」「若作り」「罪作り」

もう一つ「創る」という字がありますが、表外音訓のため、新しいものを創作・創造する意は「作る」を使用します。

「造る」は主に「build」の意で、大規模なものをつくるときや原材料を加工するときに使用し、建造・造営・造成・製造・醸造などに言いかえられる場合があります。「作る」は主に「make」の意で、比較的小規模なものや広範囲に使用し、製作・制作・作成・工作・作文などに言いかえられる場合があります。「庭造り」というと、造園業者が工事を行う規模になりますが、「庭作り」というと、趣味のガーデニングや日曜大工といったニュアンスがあります。「お造り」は、魚をおろして刺身にしたものですが、原形をとどめない加工という意味で「造」を使用します。酒は米を加工してつくりますので「造」ですが、原料の米は「作」です。

「作る」の使用が広範囲に及びますので、「作」の字を当てるのが適当でないと思われるときや、「作」か「造」かで迷うときなどはひらがな書きにしますが、その場合は、同じ語で漢字書きとひらがな書きが混在しないようにします。『標準用事用例辞典』では、「つくる」は「作り話」や「造り酒屋」のような複合名詞以外、すべてひらがな書きになりますので注意が必要です。

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「恐れ」と「おそれ」

原則:
恐怖、畏怖の意は漢字書きで「恐れ」。心配、懸念の意はひらがな書きで「おそれ」。
用例:
「敵に恐れをなす」「恐れを抱く」「恐れおののく」「恐れを知らない」「恐れ多い」「恐れ入る」
「雪崩のおそれがある」「失敗のおそれをものともせず」

「おそれ」には「恐れ」「怖れ」「畏れ」「虞」と4つの漢字がありますが、「怖れ」は表外音訓、「畏れ」は表外漢字のため、「恐れ」を使用します。余談ですが、「こわい」は「怖い」で、逆に「恐い」は表外音訓になります。「虞」は常用漢字表にありますが、一般にひらがな書きにします。「虞がある」と書いてもなかなか読みにくいからでしょう。

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「ウォシュレット」

原則:
◎「ウォシュレット」、×「ウォッシュレット」

「ウォシュレット」はTOTOの登録商標ですので、それが使用できない場合は「温水洗浄便座」などと言いかえます。ちなみに、INAXの製品は「シャワートイレ」といいます。

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「突き出し」

原則:
◎「突き出し」、×「付き出し」「付け出し」

料理屋で最初に出す小鉢などの酒の肴で、ちょっとしたおつまみのことを「突き出し」といいます。居酒屋で出てくる「お通し」と実際には同じものと考えていいでしょう。

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「季」と「期」

原則:
ある季節を指すときは「季」。ある季節のうちのある期間を指すときは「期」。
用例:
「夏季休業」「冬季オリンピック」
「夏期講習」「冬期通行止め」

「夏季」は夏に実施されるのが恒例となっているとき、「夏期」は夏のある期間に実施するときに使用し、「期」は「季」よりも限定的な意味合いがあります。

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「当たり」「辺り」「あたり」

原則:
ラ変動詞「当たる」と同義の名詞は「当たり」。ある場所の付近、周囲を指す名詞は「辺り」。接尾語的に名詞の下に付いて、婉曲に表現する「ぐらい」の意は「あたり」。体の害になる意は「あたり」。
用例:
「くじの当たり」「口当たりがなめらか」「犯人の当たりがつく」「当たり前」「当たり年」「目の当たり」「当たり散らす」「実施するに当たり」「1時間当たり1000円」
「この辺り」「辺り一面」「辺り構わず」
「あしたあたり行く」「鈴木さんあたりに聞く」「部長あたりまでが関の山」「1時間あたりで終わる」
「食あたり」「暑気あたり」「湯あたり」

ひらがな書きの「あたり」は2つあり、体の害になる意は漢字で書くと「中り」ですが、表外音訓のため「あたり」とひらがな書きにします。「ぐらい」の意は漢字で書くと「辺り」で、付近、周囲を指す「辺り」と同じですが、「~あたり」と名詞の下に付いて接尾語的に使用する場合は、一般にひらがな書きにします。『標準用字用例辞典』では、「辺り」はすべてひらがな書きになりますので、注意が必要です。

「当たり」は割合、「口あたり」や「あたりがつく」などひらがな書きにすることも多くなっていますが、「1時間あたり」など数量の場合、「~につき」「~に対して」の意は「1時間当たり」と漢字書きにしますが、「ぐらい」の意は「1時間あたり」とひらがな書きにしますので、誤解を与えないよう適切に使い分けたいものです。

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「ユニホーム」

原則:
◎「ユニホーム」、○「ユニフォーム」

「内閣告示・内閣訓令」内の「外国語の表記」では「ユニホーム」となっていますので、用字用語辞典もこれにならっていますが、原語が「uniform」のためか、一般には「ユニフォーム」も多く使用されています。国の基準や辞典に従う場合は「ユニホーム」、特にその必要性がなければ「ユニフォーム」も許容していいと思います。

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「海藻」と「海草」

原則:
昆布、ノリ、ワカメなどの藻類は「海藻」。海中に生えるアマモの類は「海草」。
用例:
「海藻サラダ」
「海草が多く生息する海」

英語で「海藻」は「seaweeds」、「海草」は「sea grass」となります。「藻(も)」と「草」の違いというよりも、「海草」が食べられるか食べられないかは別として、私たちが普段食べている昆布、ノリ、ワカメの類は「海藻」を使用します。

ちなみに、漢字で「のり」は「海苔」、「わかめ」は「若布」と書きますが、「海苔」のように本来の読みではない漢字二字以上の訓を当てることを熟字訓といい、常用漢字の読みになかったり読みにくい場合がありますので、一般にひらがな書きにします。「若布」は熟字訓ではありませんが、ここで「ノリ」「ワカメ」とカタカナ書きにしているのは、『標準用字用例辞典』の「動植物はカタカナ書き」という原則によります。ただし、漢字一字で書ける「犬」「貝」「桜」や、「海藻」のように漢字書きを慣用とするものなど、例外がいくつかあります。「海苔」も慣用と言っていいかもしれませんが、「読みやすく誤解を与えない」ことが用字用語の表記の基本姿勢ですので、『標準用字用例辞典』準拠でない場合でもなるべく漢字書きにせず、「のり」や「わかめ」など文中で埋没したり混同されそうなものはカタカナ書きにするとよいでしょう。

「かいそう」の同音異字はほかにも「階層」「回想」などいろいろありますが、間違えやすいものとして「海藻」と「海草」を取り上げました。

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「掘りごたつ」

原則:
◎「掘りごたつ」、△「掘りゴタツ」「掘り炬燵」「掘り火燵」、×「堀ごたつ」「堀ゴタツ」「堀炬燵」「堀火燵」

「ほりごたつ」はラ変動詞の「掘る」を使用して「掘りごたつ」とします。「堀」は名詞で、それ1字で「ほり」と読み、「り」は送りません。同じ意の「濠」「壕」は表外漢字のため、一般に使用しません。

「こたつ」を漢字で書くと「炬燵」「火燵」の両方ありますが、「炬」「燵」は表外漢字、「火」は表外音訓のため、ひらがな書きします。時折、「コタツ」とカタカナ書きにしているのを見かけます。間違いではありませんが、特に意図がない限りひらがな書きにします。

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「さっと」「どきっと」など

原則:
◎「さっと」「どきっと」、○「サッと」「ドキッと」、×「サっと」「サット」「ドキっと」「ドキット」

基本はひらがな書きとし、必要によってカタカナ書きにする場合は、促音(つまる音:「っ」「ッ」)までがカタカナ書き、「と」はひらがな書きとします。ほかにも「ぱっと」「すっと」「かりっと」などいろいろありますが、自然界で生じる声や音を言語で模写した擬声語、状態を言語で模写した擬態語の類で、後に「と」を伴う副詞をカタカナ書きにする場合は、原則のようにします。

擬声語・擬態語ではありませんが、「えどっこ」は「江戸っ子」と表記します。これは辞典にも載っていますが、「はまっこ」などの慣用語は「はまっこ」「はまっ子」「ハマっこ」「ハマっ子」などさまざまで、特に決まりはありません。横浜市では「はまっ子」を使用しているようですので、その場に応じて適切に表記するようにします。

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「いち早く」

原則:
◎「いち早く」、△「逸早く」「いち速く」「逸速く」、×「一早く」「一速く」
用例:
「現場にいち早く駆けつけた」

「いち早く」という副詞の活用のみですので、「いち早い」と形容詞的に使用するのは誤りです。

意外にも「いち」は「一」ではなく「逸」なので漢字にすると間違えやすいのですが、表外音訓のため「いち」はひらがな書きにします。「早く」「速く」両方可としている辞典もありますが、大方の用字用語辞典では「早く」を採用しています。

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「シンポジウム」

原則:
◎「シンポジウム」、△「シンポジューム」「シムポジウム」

原語「symposium」より。通常、「アルミニウム(aluminum)」やプラネタリウム(planetarium)」と同様に「シンポジウム」としますが、慣用的に「シンポジューム」「シムポジウム」とする場合はそれに従います。

シンポジウムは一般に、第一部に基調講演、第二部にパネルディスカッションという公開討論会の形式で行われることが多くなっています。

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