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2009年1月

「様」と「さま」

原則:
敬称の「様」は漢字書き。それ以外はひらがな書き。
用例:
「王様」「殿様」「神様」「仏様」「皆様」「お客様」「奥様」「お嬢様」「鈴木様」
「ご苦労さま」「ありさま」「生きざま」「思うさま」「続けざま」「このざまだ」「さまざま」「さまさま」

大方の用字用語辞典で敬称の「様」は漢字書きとなっていますが、『記者ハンドブック』は「皆さま」「お客さま」「奧さま」となっていますので、注意が必要です。また、マスコミ各社の皇室用語は特殊で、天皇以外の皇族に対してあらたまった場合以外は、「皇后美智子さま」「皇太子さま」「秋篠宮さま」のようなひらがな書きが「陛下」「殿下」の代わりに使用されています。

敬称に似ていますが、丁寧語の「ご苦労さま」「お世話さま」「お待ち遠さま」「お気の毒さま」などはひらがな書きにします。先ほどの皇室用語は、できるだけやさしく表記することが心がけられているようですので、丁寧語のひらがな書きを採用したのかもしれません。

「ありさま」は、用字用語辞典では「有り様」と「ありさま」に二分されていますが、「有り様」は「ありよう」とも読めますので、読ませたいほうでひらがな書きにします。「生きざま」も同様です。「様」の訓読みには「さま」「ざま」と二通りあり、よく「様々」という漢字書きが使用されますが、いろいろの意の「さまざま」とも、ありがたい意の「さまさま」とも読めますので、ひらがな書きにしたほうが誤解がありません。

原則がわかりにくくなるため用例には載せていませんが、「様になる」「様変わり」は漢字書きです。『標準用字用例辞典』のみひらがな書きになっていますので、注意が必要です。

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「ようだ」

原則:
助動詞の「ようだ」、動詞の下に付く「よう」はひらがな書き。名詞の下に付いて様式や型、「~に似た」意の複合語をつくる「様」は漢字書き。
用例:
「おっしゃるように」「手の尽くしようがない」「世の中のありよう」
「唐様の書体」「タオル様の生地」

助動詞の「ようだ」は、ほかに「ようで」「ように」「ような」などの活用がありますが、この活用をするときや、「手の尽くしようがない」と同じ例の「言いよう」や「喜びよう」などは、ひらがな書きにします。「ありよう」は、用字用語辞典では「有り様」と「ありよう」に二分されていますが、「有り様」は「ありさま」とも読めますので、読ませたいほうでひらがな書きにします。同じ例で、「生き様」も「生きざま」か「生きよう」にします。

「唐様」は「からよう」と読みますが、「唐よう」としては意味が通じにくく、また「文様」など熟語になっているものもありますので、こちらは漢字書きとします。

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「~ずつ」

原則:
◎「~ずつ」、△「~づつ」
用例:
「少しずつ」「1つずつ」「3人ずつ」

現代仮名遣いでは「~ずつ」を本則とし、「~づつ」も許容となっていますので、原則もそれに従っていますが、校正の現場では「~ずつ」で統一しています。

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「ペペロンチーノ」と「ペペロンチーニ」

原則:
原語「aglio olio e peperoncino(アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ)」というイタリア料理の名称より、一般に「ペペロンチーノ」を使用。

正確には、頭に「spaghetti(スパゲッティ)」などパスタの名称を併記します。「ペペロンチーノ」は唐辛子の意で、この複数形が「ペペロンチーニ」となります。「アーリオ」はにんにく、「オーリオ」はオイルの意で、これらをスパゲッティにあえた料理として日本でも一般的ですが、単に「ペペロンチーノ」と呼ぶことも多いです。通常、唐辛子は1~2本使用しますが、2本以上なら「ペペロンチーニ」かというとそうではなく、唐辛子、にんにく、オイル、パスタは一体化していて、唐辛子は数えられる名詞とみなされていないため、本来は2本でも3本でも上記の名称は変わりません。しかし、「ペペロンチーニ」とするメニューもありますので、その場合は固有名詞の表記として従います。

「ペペロンチーニ」がないか探してみたところ、「ペペロンチーニ・リピエーニ(辛ピーマンの詰め物)」というオイル漬けの前菜がありました。これはまさに辛ピーマン(別名:丸唐辛子)が主役で、いくつか瓶にごろごろと入っています。

ペペロンチーニ・リピエーニ - TRA NOI

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「感心」と「関心」

原則:
すぐれた物事に対して心を強く動かされることは「感心」。ある物事に対して特に心をひかれ、注意を向けることは「関心」。
用例:
「立派な演説に感心した」「その行いはあまり感心しない」「君の無鉄砲には感心する」「親思いの感心な少年だ」
「政治に関心がある」「新事業に関心を持つ」「仲間の関心の的」「他人のことに無関心だ」

「感心」は名詞から派生したサ変動詞で、主に用例1のように「感心する」の形で使用するほか、用例2のように否定的に使用したり、用例3のように「あきれる」という意で逆説的に使用したり、用例4のように形容動詞として使用することもありますが、「感心がある」「感心を持つ」のようには使用しません。これに対して、「関心」はあくまで名詞ですので、「~する」や「~だ(な)」が後に続きません。ただし、用例4の「無関心」は名詞・形容動詞ですので、「~だ(な)」が後に続くことがあります。

「感心」の類語には「感服」「感銘」「感嘆」などがあり、形容動詞の「感心な」は「立派」に置き換えられます。「関心」は「興味」で置き換えられますので、迷ったらこれらの言葉に当てはめてみるのはもちろんですが、名詞なのかサ変動詞なのか形容動詞なのかといった品詞としても、きちんと区別して使用することが望まれます。

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「整える」と「調える」

原則:
「整理」「整頓」「整然」「整備」等の意は「整える」。「調達」「新調」「調味」「調節」等の意は「調える」。
用例:
「服装を整える」「準備を整える」「体調を整える」
「婚礼家具を調える」「味を調える」「音程を調える」

「整える」と同義で「斉える」という表記がありますが、現在では一般に使用しません。

上記のような原則は示しましたが、かなり迷いやすい同訓異字と言えます。用例には、確実に使い分けたほうがよい例を挙げました。しかし、「調整」という言葉があるようにどちらも似た意で、使い分けの境界線があいまいになっています。どちらかというと「調える」よりも「整える」のほうが使用頻度が高いようで、あいまいな部分のほとんどは「整える」とされています。

用例にならえば、旅支度は「調える」ですが、身支度は「整える」になります。前者は、旅に必要なものをそろえたりすることで「調える」、後者は、顔を洗ったり服を着がえたりして身なりをきれいにすることで「整える」というわけです。では、髪はどちらでしょうか。朝起きて乱れた髪をとかしたりするときは「整える」、理容店などで髪を切ったり刈ったりするときは「調える」となります。「整髪」「調髪」という似た言葉がありますが、「調髪」はカットなどの前工程、「整髪」はセットなどの後工程のことをいいます。厳密に言うとそういう違いがあるのですが、ほとんどは髪を「整える」で済まされていて、それでも特に問題がなくなってきているのが現状です。

楽器の音程、リズムやテンポなどの調子は「調える」で、「調音」「調律」という言葉があります。体調や呼吸は「整える」で、「整体」という言葉があります。このように使い分けが難しいので、迷ったらひらがな書きにすることをおすすめします。

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「従って」と「したがって」

原則:
動詞の「従う」は漢字書き。接続詞の「したがって」はひらがな書き。
用例:
「命令に従う」「夜が更けるに従って冷え込む」
「賛成が過半数に達した。したがって、本案は可決された」

動詞の「従う」には、「続く」「沿う」「ならう」「~につれて」などの意がありますが、接続詞の「したがって」は、「だから」「ゆえに」「その結果」といった意があり、動詞と接続詞という用法も異なりますが、意味も似ているようで異なります。

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「ちりばめる」

原則:
◎「ちりばめる」、△「鏤める」、×「散りばめる」
用例:
「宝石をちりばめた装飾品」「珠玉の言葉がちりばめられた作品」

「一面に散らすようにはめ込む」という意から、「散りばめる」という誤表記が多いですが、本来は「鏤める」が正表記です。「鏤」は表外漢字で、難読でもありますので、「ちりばめる」とひらがな書きにします。

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「レジュメ」

原則:
◎「レジュメ」、△「レジメ」

原語「resume」より(フランス語で、e はアクサン・テギュ - 綴り字記号)。「レジメ」を許容する辞典もありますが、一般に「レジュメ」と表記します。フランス語では「要約」の意ですが、米語では「履歴書」の意があります。もう一つ「再開する」という意もあり、この場合は「レジューム」と表記します。同じ言葉でもカタカナ語の表記によって意味が異なりますので、注意が必要です。

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「解放」と「開放」

原則:
束縛や制限を取り除いて自由にする意は「解放」。門や戸を開け放して自由に出入りさせる意は「開放」。
用例:
「ストレスから解放される」「日常からの解放感」「人質を解放する」
「門戸を開放する」「暖房中のため開放厳禁」「開放的な性格」

「かいほう」には上記以外にも、「介抱」「解法」「快方」「会報」など、さまざまな同音異字がありますが、最も変換ミスをしやすいのが「解放」と「開放」です。どちらも自由になるという意味では同じですので、余計に迷いやすいのだと思いますが、「open(オープン)」の意であれば「開放」と覚えておくと判断がしやすくなります。「開放的な性格」も、よく「オープンな性格」と言ったりします。

ここで注目したいのが「解放感」です。この字を当てるのは、人が精神的に自由になる場合ですが、最近は住宅や店舗などの広々とした空間を表すときに、「開放感」という言葉を使用することがあります。実は辞典には載っていないのですが、「開放的」という言葉があるためか、目にしても違和感なく、言葉の意味がすんなりと理解できますので、特に問題がなければ使用してもいいでしょう。逆に、「解放感」しか辞典にないからといって、例えば「開放感のあるテラスで食事をする」を「解放感」に直してしまうと、意味が通じなくなってしまいます。

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「縁」と「淵」

原則:
物の端の部分は「縁」。川の水が深くよどんでいる所は「淵」(⇔「瀬」)。「渕」は「淵」の異体字。
用例:
「皿の縁」「縁取り」「額縁」
「絶望の淵」

「edge(エッジ)」の意は「縁」で、この字には「ふち」のほか、「へり」「ゆかり」「えにし」「よすが」という5つの訓読みがあります。「崖っ縁」もこの字ですが、「崖」が表外漢字(2010年の常用漢字追加候補)のため、『標準用字用例辞典』ほか多くが「がけっ縁」、『記者ハンドブック』では「がけっぷち」となっています。

表外漢字といえば「淵」も同様ですので、この意では「ふち」とひらがな書きにします。「渕」は「淵」の異体字ですので、「川渕」さんのような人名、地名などの固有名詞以外は使用しません。ちなみに、神奈川県相模原市の「淵野辺」は、住所も駅名も「淵」が正しい表記です。

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「的を射る」

原則:
◎「的を射る」、×「的を得る」
用例:
「的を射た表現」

話すときに「まとをえる」と言いがちなためか、「的を得る」という誤表記が多いですが、正しくは「的を射る」です。

「的」は「射る」?「得る」? - NHK放送文化研究所

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「できる」

原則:
「できあがったもの(こと)」の意の名詞「出来」は漢字書き。「つくられる」「可能である」等の意の動詞「できる」はひらがな書き。
用例:
「出来心」「出来事」「出来高」
「橋ができる」「理解できる」「できるだけ」

基本的に、名詞は漢字書き、動詞はひらがな書きと覚えていいと思います。『記者ハンドブック』等の用字用語辞典でも、ほとんどがそのような使い分けを原則としていますが、『標準用字用例辞典』は他と少し異なりますので注意が必要です。「出来合い」「出来上がる(出来上がり)」「上出来」「不出来」はいずれも、「でき合い」「でき上がる(でき上がり)」「上でき」「ふでき」となっています。これらは、『標準用字用例辞典』準拠でない限り、漢字書きで構いません。

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「アボカド」

原則:
◎「アボカド」、△「アボガド」

原語「avocado」より。正しくは「アボカド」ですが、「アボガド」と誤表記されていることが多く、「マグロとアボガドのサラダ」のような料理名など、固有名詞の表記に従う必要性がある場合に限り「アボガド」も可とし、原則は△としました。

アボカド - Wikipedia

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「綿棒」と「麺棒」

原則:
先に綿をつけた細い棒は「綿棒」。麺の生地を伸ばす棒は「麺棒」。
用例:
「耳を綿棒で掃除する」
「そばの生地を麺棒で伸ばす」

同じ「棒」がつくためか、「綿棒」と「麺棒」の誤変換が多いようです。「麺」は簡易慣用字体で、本来の「麥」に「面」と書く字はパソコンで出そうと思えば出せますが、特定のパソコン環境上でしか正しく表示されない機種依存文字ですので、注意が必要です。また、「麺」は表外漢字ですので、常用漢字内の表記が条件である場合は「めん棒」とひらがな書きになりますが、2010年に常用漢字に追加されることになった191字の中に「麺」が入ったことから、近いうちにその制限もなくなることでしょう。

常用漢字 新常用漢字:漢字辞典ネット

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「こぢんまり」

原則:
◎「こぢんまり」「小ぢんまり」、×「こじんまり」「小じんまり」
用例:
「こぢんまり(と)したお店」

「こぢんまり」は小さいながらほどよくまとまっている意で、「ちんまり」に「小」が付加された語です。「こぢんまり」も「ちんまり」も同義ですが、一般には「こぢんまり」のほうがよく用いられるためか、「ちんまり」が忘れられ、「こじんまり」に間違われることがよくあります。大辞泉では、

「こしまり(小締まり)」の音変化とみて「こじんまり」とする説もある。

とありますが、ほとんどの辞典が「こぢんまり」を採用していますので、原則も「こじんまり」を×としました。「小」は漢字でもひらがなでも可ですが、『標準用字用例辞典』では「小ぢんまり」となっています。「こぢんまりとした店」と書くのをはばかられる人もいるようですが、落ち着いた、ほっとする、和む、家庭的など、いい意味で使用されます。

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「ボウリング」と「ボーリング」

原則:
原語「bowling」はスポーツ競技で「ボウリング」と表記。原語「boring」は穴を掘る意で「ボーリング」と表記。

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「からあげ」

原則:
◎「唐揚げ」「空揚げ」「から揚げ」「からあげ」

一般には「唐揚げ」の使用頻度が多いようですが、辞典には「空揚げ」の記載もあり、日清製粉の商品名は「から揚げ粉」、「からあげ○○」という店名もあることから、文章を書く際は固有名詞の表記を優先して原則のいずれかで統一します。本来は、衣をつけないか、薄くつけることで「空揚げ」とするのが正しいとされていますが、料理や商品のイメージから、「空」ではなく「唐」を当て、それが広まって「唐揚げ」のほうがメジャーになったと考えられます。

漢字の現在:「から揚げ」 - Sanseido Word-Wise Web

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「ほとんど」

原則:
◎「ほとんど」、△「殆ど」

「殆」は表外漢字のため、一般に「ほとんど」とひらがな書きにします。

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