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2008年12月

「和気あいあい」

原則:
◎「和気あいあい」、△「和気靄々」「和気藹々」、×「和気合い合い」
用例:
「和気あいあいとした雰囲気」

その意味からてっきり「合い合い」かと思って変換したら、「靄々」や「藹々」など難しい漢字が出てきてびっくりした、という人も多いのではないでしょうか。「靄々」か「藹々」は辞典によって違いがありますが、いずれも表外漢字ですので「あいあい」とひらがな書きにします。

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「シミュレーション」

原則:
◎「シミュレーション」、×「シュミレーション」「シミレーション」

原語「simulation」より。

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「油」と「脂」

原則:
「oil」の意で、主として植物性の液体状は油。「fat」の意で、主として動物性の固体状は脂。
用例:
「油で揚げた肉」「油を売る」「油を絞られる」「火に油を注ぐ」
「脂が乗った肉」「脂身」「脂汗」「脂性」「脂ぎった顔」「脂っこい食事」

大辞林には「特に肉の脂肪を膏と書く」とありますが、「膏(あぶら)」は表外漢字ですので、この意では「脂」を使用します。化粧直しの「あぶらとり紙」は、漢字を当てると「脂取り紙」になりますが、一般に「あぶらとり紙」とする商品が多いことからひらがな書きにします。「油取り紙」としますと、キッチンペーパーのような台所用品を想像させますので注意が必要です。

油と脂のおはなし|JA北海道厚生連

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「以外」と「意外」

原則:
ある範囲の外側(⇔「以内」)、その物事を除く意は「以外」(→「その他」)。考えていたことと違う、思いがけない意は「意外」(→「予想外」「案外」「存外」「心外」)。
用例:
「この5人以外は落選」「日曜以外は出勤」「こうする以外にない」「関係者以外立入禁止」
「意外と知られていない」「意外に大きかった」「意外な人に会った」「意外なほどあっさり終わった」

「以外」と「意外」は似て非なるものですので使い分けが必要ですが、“意外に”混同されがちで、すべてひっくるめて「以外」としている場合が多いようです。「以外」は物事に対して、「意外」は思いに対して使用します。

「その他」は「AとBとC、その他D」のように「AとBとC」と「D」が並列している場合に使用し、「AとBとC以外のD」とすると「AとBとC」の範囲からはずれた「D」という意味合いになります。これは、「他」と「外」の違いによるものです。

「意外」は、良くも悪くも当てがはずれて驚いたようなときに使用します。大辞泉では、「意外」を「考えていた状態と非常に違っていること」とし、「案外」との使い分けを以下のように記しています。

[用法] 案外・意外――「案外」は予想と事態が違っていた場合に使う。「期待していたが、案外つまらない映画だった」「心配していたが、仕事は案外楽だった」など。◇「意外」は「意外に時間が早くたってしまった」「パーティーで意外な人に会った」のように、「意外な」「意外に」の形で、考えていたことと実際が違う場合や、予想できなかったようなことに使う。

違いとしては、予想と異なる度合いが大きいほど「意外」で、それほどでもないのが「案外」となります。語気の強い順に、「意外」「予想外」>「案外」「存外」となり、「心外」は悪い結果に対して使用します。「案外つまらない映画だった」よりも、「意外につまらない映画だった」のほうが、期待を裏切られた気持ちが強くなるわけです。

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「所」と「ところ/どころ」

原則:
「place」の意で、概して「場所」と言いかえられ、空間的な場所を指すときは「所」と漢字書き。それ以外は「ところ」とひらがな書き。
用例:
「近い所にある」「口の右上の所にあるほくろ」「所変われば品変わる」「所構わず」「所狭しと」「至る所」
「今のところ」「聞くところによると」「ちょうど始まるところだ」「そこがいいところだ」「知るところとなる」「目指すところの理想」「訪ねたところ不在だった」

「それ以外はひらがな書き」と少々乱暴な分け方をしましたが、ひらがな書きの用例は、「知るところとなる」が形式名詞、「目指すところの理想」が連体修飾語、「訪ねたところ不在だった」が接続助詞と、名詞の「所」とは異なる文法的役割があるものの、それだけでは使い分けの根拠として不十分であり、また、実際には文法を意識して使い分けをしているわけではないため、あえてシンプルに原則を示しました。

「所変われば品変わる」「所構わず」「所狭しと」「至る所」の「所」は場所を指しますので漢字書きになりますが、『標準用字用例辞典』では「至る所」のみ「至るところ」とひらがな書きになっていますので、これに準拠する場合は注意が必要です。

接続助詞の「ところが」「ところで」は、「訪ねたところ不在だった」の類ですのでひらがな書きにします。

「ところどころ」は意見が分かれますが、漢字の「所々」は「しょしょ」とも読むことから、「ところどころ」と読ませたい場合はひらがな書きにします。

「米どころ」「つかみどころ」「見どころ」「きれいどころ」と濁る場合は、いずれも「どころ」とひらがな書きにします。「お食事処」「お休み処」という表記を目にすることがありますが、「処(ところ)」は表外音訓です。固有名詞やあえて意図して使用する必要があるとき以外、「ところ」と読む「処」は使用しません。

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「若干」と「弱冠」

原則:
はっきりしないがあまり多くないことを表す場合は「若干」。年が若いことを表す場合は「弱冠」。
用例:
「若干の余裕がある」「若干名」
「弱冠20歳で初優勝」

「弱冠」とは本来、古代中国で男子が20歳になると元服し、冠をかぶるようになったことから、20歳の男子を指しますが、現在では20歳でなくても相対的に若いことを表すときに使用されています。ただし、女性に使用することには異論も多いので、避けたほうがよいでしょう。

弱冠35歳は正しい? - 気になることば

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「コンマ」

原則:
◎「コンマ」、△「カンマ」

原語「comma」より。横書き文章の途中の区切り、日本語における読点「、」と同様に使用される「,」の名称です。また、英語圏や日本などでは数字のけた区切りに使用します。

よく、「0コンマ何秒」と言うときがありますが、これは、非英語圏のヨーロッパなどでは数字のけた区切りにピリオド「.」を使用し、小数点はコンマ「,」を使用していることによります。

また、表計算ソフトやデータベースソフトにはCSV(Comma-Separated Values)というテキストファイルの保存形式がありますが、これはデータを「,」で区切っていることから「カンマ区切り」と言われます。このこともあって、実際には「,」を「カンマ」とすることもよくあるのですが、用字用語の統一という観点からは、「内閣告示・内閣訓令 - 外来語の表記」に従い、各社辞典も「コンマ」の表記を採用しています。

ちなみに、日本語における句点「。」と同様に使用される「.」は「ピリオド」とし、インターネットのURLアドレスに使用される「.」は「点」を意味する「ドット」とするのが一般的です。

コンマ - Wikipedia
小数点 - Wikipedia
ピリオド - Wikipedia
終止符 - Wikipedia

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「~づらい」

原則:
◎「~づらい」、×「~ずらい」
用例:
「見づらい」「わかりづらい」「話しづらい」

「辛い(つらい)」より。動詞の連用形に付いて、その動作をするのに困難を感じる意を表す接尾語です。「辛い(つらい)」は表外音訓ですので、「見辛い」とせず、「見づらい」とひらがな書きにします。

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「固体」と「個体」

原則:
「固体」は物質の三態の一つ(→「液体」「気体」)。「個体」は独立した一個の生物体、固有の存在。
用例:
「気体・液体・固体」「固体力学」
「個体識別」

BSE(牛海綿状脳症)対策が行われるようになってから、牛の個体識別番号を飲食店や精肉店等で目にする機会も多いのではないでしょうか。この場合の「こたい」は「個体」です。

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「コミュニケーション」

原則:
◎「コミュニケーション」、×「コミニュケーション」「コミニケーション」

原語「communication」より。

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「下さい」と「ください」

原則:
動詞「下さる」の命令形、「頂戴する」の意は漢字書き。補助動詞の「(お・ご)~ください」「~(て)ください」など、相手に何かの動作を求める場合はひらがな書き。
用例:
「資料を下さい」「猶予を下さい」
「お書きください」「ご注意ください」「出席してください」

漢字書きかひらがな書きでどちらも一緒にされている場合が多いですが、役割が異なりますので使い分けが必要です。

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「味わわせる」

原則:
◎「味わわせる」、×「味あわせる」
用例:
「鑑賞の楽しみを味わわせる」

「味わう」はワ行五段活用ですので、文法的には「味わわせる」が正しいのですが、「わ」が二つ並ぶことで言いにくいためか、「味」+「合わせる」と思われているためか、実際には「味あわせる」派のほうが多いようです。大辞林には「味合わせる」が載っていました。

[連語][動詞「あじわう」に助動詞「せる」の付いたもの]うまみや面白みを感じ取らせる。あじわせる。

「味合わせる」を採用している辞典は大辞林以外今のところ見当たりません。「あじわせる」ともありますので、「あじわせる」「あじわす」ともに調べてもありませんでした。

Yahoo!辞書 - 味合わせる
気になることば - 是非 味あってください!?

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「乾く」と「渇く」

原則:
湿気・水分・潤いがなくなる意は「乾く」(⇔「湿る」)。のどがかわく、または満たされていないために強く求める意は「渇く」(=「飢える」)。
用例:
「洗濯物が乾く」「空気が乾く」「舌の根の乾かぬうちに」
「のどが渇く」「愛に渇く」「渇きを癒す」

「乾燥」「渇望」といった言葉に当てはめてみると判断しやすいでしょう。「渇水」は、日照りが続いて雨が降らないために川や池などの水がなくなる意で、まさに「のどから手が出る」ほど水が欲しいという気持ちが含まれています。

「乾く」には「感情や人間味がなくなる」意もあるので、「心がかわく」はどちらにすべきか迷うところですが、心がかわいている状態を指すことから「乾く」とします。「愛に渇く」とするのは、愛のない状態から愛を欲しがることによりますので、例えば「二人の愛がかわいた」は「乾いた」となり、それによって「愛に渇く」となるわけです。「に」と「が」の助詞の使い分けがポイントです。同じ意で「愛に飢える」という表現もあります。

田村正和主演の「乾いて候」という時代劇がありますが、このタイトルは主人公の「身も心も乾いた」状態をうまく表しています。

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用語解説

用字用語
「用字」は、漢字、ひらがな、カタカナ、その他の文字の使い方。また、使用している文字。「用語」は、単語、熟語、複合語、その他の字句や言葉の使い方。また、使用している字句や言葉。
表記
文字や記号で書き表すこと。
表外漢字
常用漢字表から外されている漢字。「餅」「袖」など。
表外音訓
常用漢字表から外されている読み。「愛しい(いとしい)」「応える(こたえる)」など。
同義語
語形が異なる意味の同じ語。「登山」と「山登り」、「病気」と「病」など。
類義語
語形が異なる意味の似た語。「家」と「住宅」、「ホテル」と「旅館」など。広義では同義語も含まれる。類語。
対義語
意味が反対の関係にある語。「男」と「女」、「大きい」と「小さい」など。反義語。反意語。反対語。対語。
外来語
他の言語に由来し、日本語と同様に使用されるようになった語。現在では一般にカタカナで書かれる。また、外来語と外国語の区別は主観的なもので、個人によって異なることがある。
固有名詞
名詞の一つ。他と区別するためにそのものだけに付けた名。人名、地名、国名、社名などの類。一般的な名称の普通名詞と区別しにくいことがある。
形式名詞
名詞の一つ。それ自身では実質的意味が薄く、連体修飾語を受けて使用される語。「療養中のところ」「手紙を書くこと」の類。形式体言。
助詞
品詞の一つ。付属語で活用のないもの。自立語に付いて、その語と他の語との関係を示したり、その語に一定の意味を加えたりする。「てにをは」。
接続助詞
助詞の一つ。前の語句を後の語句に接続し、前後の語句の意味上の関係を示す働きをする。「ば」「と」「ても(でも)」「けれど(けれども)」「が」「のに」「ので」「から」「し」「て(で)」など。
補助動詞
動詞のうち、本来の意味と独立性が薄れ、付属的に用いられるようになったもの。「正解である」「機能している」「食べてみる」「読んでください」の類。
連用形
活用形の一つ。「走り回る」の「走り」のように下の語に続いたり、「天高く馬肥ゆる秋」の「高く」のように文を中止したり、「曇り」「休み」のように名詞に転用したりするのに用いる。文語では「き・けり・たり」など、口語では「た」などに接続したりする。
活用語
活用のある単語。日本語では、動詞・形容詞・形容動詞・助動詞の総称。
連体修飾語
修飾語のうち、活用しない体言を修飾する語。「白い花」「梅の花」「咲き誇る花」の類。形容詞的修飾語。⇔連用修飾語。
連用修飾語
修飾語のうち、活用する用言を修飾する語。「非常に多い」「大変重い」「美しく散る」の類。副詞的修飾語。⇔連体修飾語。
接頭語
語構成要素の一つ。単独で用いることはなく、常に他の語の上に付き、その語とともに一語を形成する。「お話」「御用」の類。接頭辞。⇔接尾語。
接尾語
語構成要素の一つ。単独で用いることはなく、常に他の語の下に付き、その語とともに一語を形成する。「彼」「人たち」「神さま」のように意味を付加するものや、「寒」「春めく」「男らしい」のように文法的機能を持つものがある。接尾辞。⇔接頭語。

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参考サイト

国語施策情報システム
「内閣告示・内閣訓令」内の「常用漢字表」「現代仮名遣い」「送り仮名の付け方」「外来語の表記」、「参考資料」内の「公用文に関する諸通知」を参考。
文部省用字用語例
「公用文の書き表し方の基準(資料集)」に記載されている「文部省語例集」のうち、「文部省用語用字例」を抜粋し、編集している。五十音検索が可能。
わかりやすい技術文書・ビジネス文書の作成手法
「第7部 用字用語の考え方と用例」を参考。
気になることば
NHK総合テレビ「お元気ですか 日本列島」の「気になることば」コーナー。
語源由来辞典
語源や由来を辞書形式で解説する語源サイト。
かんぴょう - 漢字と表記
日本語の書き方(表記)に関するサイト。漢字変換用辞書データも提供している。

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参考文献

  • Yahoo!辞書
    大辞泉/小学館
    大辞林/三省堂
  • Microsoft Bookshelf Basic Version 3.0
    新明解国語辞典/三省堂

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カテゴリーについて

用字用語の記事は以下5つのカテゴリーに分類しています。この「カテゴリーについて」など、用字用語以外の記事は「資料室」にまとめています。

◇間違えやすい表記
「~づらい(×ずらい)」「掘りごたつ(×堀ごたつ)」など、以下に該当しないもの。
◇漢字書きとひらがな書き
使い分ける「事・こと」「時・とき」、ひらがな書きの「ように」「ただし」など。
◇カタカナ表記
「メーク」「スウェーデン」「ウォシュレット」など、外来語に限らずカタカナで表記する語。
◇同訓異字
「暖かい・温かい」「効く・利く」など、同じ訓読みで異なる漢字の語。異字同訓。
◇同音異字
「回答・解答」「並行・平行」など、同じ音読みで異なる漢字の語。同音異義語。同音語。

※「かな」は「仮名」が正表記ですので「平仮名」「片仮名」となりますが、本ブログでは慣用的な「ひらがな」「カタカナ」を使用します。

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凡例

◇記号
◎:正表記。
○:許容表記。正表記の次に推奨される表記。
△:不適表記。間違いとは言えないが推奨しない表記。
×:誤表記。
=:類義語。同義語も含む。
⇔:対義語。
→:参照語。
◇タイトル
正表記を「 」でくくり記載。
使い分けの場合はその読みか候補を「 」でくくり記載。
◇本文
原則:記号とともに記載。または使い分けの仕方。
用例:使い分けの実例など必要に応じて記載。
以下、解説、補足、根拠、参考リンクなどあれば記載。

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このブログについて

このブログで示している原則は、有限会社アルファテキストの校正基準となっています。当社では、お客様の指定がない限り、テープ起こし業務の表記は日本速記協会『標準用字用例辞典』に準拠し、校正業務では独自の校正基準を設けています。この校正基準は、国の基準並びに複数の辞典を比較検討し、多数もしくは一般的・現実的な表記を採用したものです。国の基準は公用文について定めたものですので、それだけでは結論が得られないこともあります。一方、民間の辞典は各社各様、時代とともに変遷し、業界ごとにもさまざまなルールがあることから、一概にどれが正しいとは言い切れないのが現状です。

このような中で、日本語を扱う仕事に携わる立場から、間違えやすい、迷いやすい用字用語を取り上げ、一般に通用する指針が導き出せないかとの思いで、このブログを立ち上げました。ここで示す原則は主観的見解に基づきますが、辞典等の参考情報を引きながら、できるだけ多くの理解が得られるよう心がけて執筆に取り組んでいます。日本語に接する際、このブログが適切な判断をするための一助となれば幸いです。

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